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技術情報TECHNICAL INFORMATION
光の3原色は、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)。太陽の光をプリズムで分けると虹の7色。でも、もっと細かい色(波長)で分けることができます。さらに、目には見えない紫外線や赤外線も、波長ごとに分けることができます。それが分光です。
分光して得られるデータは物質ごとに特有の値を示す為、人間の目では同じに見える物の違いを見分けられることがあります。カメラと同じように画像が撮影出来て、さらに分光までできる装置。それがハイパースペクトルイメージングシステムです。つまり、測定した物に含まれる物質や成分の空間的な分布を判別することができます。
画像処理を使った選別や検査は広く使われるようになってきています。食品のサイズ、形、色、表面状態であれば、一般的なカメラでも計測できます。しかし、ハイパースペクトルカメラを使用すれば、一段とスマートな検査が可能になります。
食品の品質は1つの要因では決まるわけではなく、多数の項目が関連します。ハイパースペクトルイメージングは、同時に複数の項目を判定でき、素早く結果を得られます。これまで困難だった検査を、非破壊+非接触で、簡単に正確に行えます。
外観だけではなく、食品に含まれる水分、脂肪、糖分、タンパク質、組成の均一性など、品質に関わる成分を推測できます。さらに、異物、混入物、汚染物質など、消費者の安全性に関わる物質を検出することも可能になります。ハイパースペクトルカメラを用いた食品検査の具体例は、各ページをご覧下さい。
このような理由により、食品の評価、認証、安全性において、ハイパースペクトルイメージングは重要な解析手段となってきています。さらに、素早く正確に検査ができるので、製造ラインにおいて客観的かつ自動化された品質評価が可能です。
プロセス中の自動オンライン検査
ClydeHSI社のハイパースペクトルカメラはプッシュブルームスキャン方式を採用しており、ラインカメラのような使用方法ができます。そのため、研究段階で確立したセットアップやデータ分析方法は、そのまま現場でのリアルタイムなオンライン検査に移行できます。卓上型のシステムでは、用途に応じて直動型のステージや高速コンベヤベルトを使用でき、非常に簡単に工場や実験室環境に導入可能です。また、食品工場でのスチーム洗浄に対応するよう、システムを密閉型にすることも可能です。
高速での選別や分類は、食品分類を含む非常に幅広い用途において、ハイパースペクトルイメージングが実現可能です。分光データを空間的に取得することにより、色、形、サイズによる欠陥や、不良品、汚染、異物の判定を可能にします。 さらに近赤外を使用すると、似たような色や形の物の中から、良品と異物を分離することができます。分光データは多くの場面において、良品、不良品を識別する要綱な手段となります。
また、ClydeHSI社の高度な機械学習と分類アルゴリズムにより、製造ラインの装置に組込んでの識別が可能で、その結果を元にパドルやロボットアームなどのセパレータをリアルタイムに動作させられます。
果物や野菜の流通過程では、最終的に市場に出荷される前に、収穫、洗浄、選別、等級分け、梱包など、いくつもの検査段階があります。特に高速で処理を行うラインの場合、目視検査では小さな損傷を見落とすことがあります。また、手動での選別は、速度が遅い、コストが掛かる、バラつきが出る、効率が悪い、個人差がある、人為ミスが生じるといった問題点があります。
ハイパースペクトルイメージングは、傷や損傷、pH、可溶性固体濃度、表面の色や外観など、果物や野菜の品質管理に有効です。例えば、病原体が存在する可能性がある損傷した表皮の検出ができます。低温損傷や内部の病変などの欠陥を調べることもできます(この場合、反射光による計測だけではなく、透過光や蛍光イメージングを加えることも可能です)。また、熟成度やかたさを評価することも可能です。例えば、バナナは熟成すると皮の含水量が下がり800〜960nmの反射率が低下します。果物中の水分の測定により、食品加工における水分含有量のバラつきを抑え、安定した品質の食品を製造できます。
ハイパースペクトルイメージングは穀物や豆類の分野でも非常に有効な手段として活用されています。特に、高い空間分解能の高い装置を使用することで、小さな1粒1粒を判別でき、リアルタイムの評価や選別が可能になります。穀物や豆類の主な評価項目は、大きさ、形状、色、外観ですが、ハイパースペクトラルイメージングを使用することにより、加工食品の機能性に最も重要な項目の1つであるタンパク質含量の推定や、化学組成、油分、オレイン酸、含水量、小麦の種類、希釈化合物の推定が可能です。また、昆虫などの混入物や、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)やAspergillus parasiticusによるマイコトキシンやアフラトキシンなど、健康に害を及ぼす物を選別することも可能です。
測定波長帯
検査項目
米
VNIR
種類、ニホンコウジカビ検出、小さなプラスチックの混入
小麦
VNIR / SWIR
含水率、種類、タンパク質、フザリウム、虫害、マイコトキシンやアフラトキシンの種類
大麦
アフラトキシンB1、タンパク質、水分
トウモロコシ
アフラトキシンB1、水分、油分、オレイン酸、胚乳の硬さ、フザリウム汚染、Aspergillus flavus、Aspergillus parasiticus
大豆
色、水分
ゴマ
NIR
油分
食肉において、品質や安全性に対する要求は高まり続けています。消費者は商品を選択するときに、色、サシ、柔らかさなどを重要視します。食肉にハイパースペクトルイメージングを使用することで、色、ドリップロス、pHだけではなく、鮮度、柔らかさ、脂肪、タンパク質、コラーゲン、含水量を推定できます。また、挽肉内への混入物の検出でも多く使用されています。
ハイパースペクトルイメージングは、様々な化学的特性の分布を明らかにできるので、肉や魚に含有される成分の量や分布を測定する手段として有効です。
例えば食肉中の脂肪において、筋内脂肪(脂肪交雑)はおいしさに直結する非常に重要な要素です。一方で、健康を意識する消費者にとっては、「脂肪の量」が重要になります。
pHは、肉の色、保水能力、質感だけでなく、微生物の増殖や酵素の機能にも影響を与えます。そのため、食肉処理時にもpHを測定する必要性があります。
高速で行う家禽の検査でも、糞便、腫瘍、ウッディブレストなどを検出するために、ハイパースペクトルイメージングを用いたオンライン検査が実施されています。また、鶏肉で問題となる残留した軟骨や小骨も、ハイパースペクトルイメージングを用いると高い精度での検出が可能になります。
肉類は栄養成分が多いために微生物汚染の影響を受けやすく、消費者の安全性に関わります。それらを迅速かつ正確に検出する為の有効な技術としても、ハイパースペクトルイメージングは使用されています。
魚の品質において特に重要な「鮮度」。ハイパースペクトルイメージングは魚の鮮度評価にも活用されています。さらに、工場での高速ラインでも広く使用されています。例えば、タラ、サーモン、マスなどの鮮度、保存状態や保存時間の影響、冷蔵や冷凍の影響、血斑、メラニン沈着、切り身の小骨、アミノ酸や脂肪酸、脂質の酸化、色などを評価しています。
牛肉
VNIR / NIR / SWIR
識別、認証、色素、pH、柔らかさ、脂肪含量、保水性、サシ、色
豚肉
VNIR / NIR
鮮度、柔らかさ、肉質、ドリップロス、色、pH、大腸菌汚染、新鮮な肉と解凍した肉の判別
鶏肉
ウッディブレスト、むね肉の小骨、含水量、腫瘍、傷、深胸筋変性症、糞便や消化器内容物による汚染
ラム
脂肪含量、pH、混入物の検出、鮮度、色、外観
マグロ
総脂質、脂肪酸、色、鮮度
カジキ
鮮度
サーモン
鮮度、血斑、メラニン沈着、小骨、色、脂質含量、アスタキサンチン含量、残存微生物
マス
鮮度、血斑、メラニン沈着、小骨、色、脂質含量
スズキ
鮮度、脂質含量、水分量
タラ
カキ
水分、タンパク質、脂質、グリコーゲン含量、鮮度
乳製品でも、ハイパースペクトルカメラの分光特性から化学組成を測定することが可能です。例えば、NIRやSWIRの波長帯を使用すると、脂肪、タンパク質、炭水化物の含量に基づくチーズの分類ができます。ハイパースペクトルイメージングの測定データから、硬さ、水分、脂肪の分布や、チーズの保存や安全性に関わる物質の有無を示すことができます。さらに、チーズや他の食品へのプラスチック混入の検出にも使用されています。
ミルクなどの不透明な食材において、VNIRにおける吸収や散乱は脂肪含量に優れた相関性を示します。乳児向けや動物飼料用の粉乳製品にメラミンを添加することによって、タンパク質含量を高く偽装した例が報告されています。NIRは比較的少ないメラミンでも検出できる優れた感度があります。粉ミルク中のメラミンの場合、約200ppm以下の濃度の計測が可能です。
チーズ
NIR / SWIR
タンパク質、脂質、炭水化物、水分
ミルク
脂質、メラミン混入
健康状態を保つために、食品の持つ機能性成分が注目されています。例えば、オメガ3とオメガ6が高い製品は、脳の健康や視力に効果があり、善玉コレステロールを増やすと言われています。オメガ3を含む食品としては、魚、オリーブ油、ニンニク、亜麻の種子、クルミ等のナッツ類があります。またオメガ6は、鶏肉、豚肉、牛肉、乳製品、植物油、パンやクッキーなどの焼き菓子に含まれます。これらの脂肪酸を豊富に含む製品は、通常よりも高付加価値なプレミアム製品となります。機能性食品に関する重要な分子を特徴付けるためにも、ハイパースペクトルイメージングが適用されています。NIRのハイパースペクトラルカメラは、機能性食品の同定や分類、脂肪酸含有量の定量化に使用されています。
魚油やサプリメント、油などの液体に懸濁された医薬品材料など、カプセルに充填された製品があります。これらのカプセルは一般に、ゼラチンや植物性素材から製造されます。また、硬度、色、表面処理などの特性を得る目的や防腐剤として添加剤が使用されることが多くあります。カプセルが液体を保持する為に、品質や寿命は非常に重要です。ハイパースペクトルイメージングは、カプセル材料、色や特性の確認、内容物、漏れ、ガス侵入のチェックに使用できます。
芸術作品の保存や修復:下に塗られている塗料を明らかすることができます。また、塗料や結合剤、他の材料の化学成分を確認するために使用できます。
科学捜査:書類の変造された文字、犯罪における身体や体液、あざや傷が加えられた時間を明らかにすることが可能です。
工業製品の品質管理:生産ラインでの異物や不良品を検出することが可能です。
医療:組織間の差異や、異常な血流や酸素供給の検出など、幅広い用途があります。
リサイクル:赤外線を用いるとプラスチックの色に関係なく、プラスチックの種類を区別することができ、より確実で簡単なリサイクルプロセスが可能になります。
ハイパースペクトルイメージングシステム Hyperion HSI
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